七十二候とはなんだろう-その④冬

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こんにちは、原田です。

9月も半ばになり、夏の暑さが残りつつも朝方など少々肌寒い季節になりました。服装も上に着るものを1枚増やそうか悩む時期ですね。今回は、いよいよ最後となりました、七十二候しちじゅうにこうの「冬」の時期について紹介していきます。

『冬』の七十二侯

●二十四節気「立冬(りっとう)」

山茶始開(つばきはじめてひらく):11月7日頃

山茶花さざんかの花が咲き始める頃となります。一見すると「椿つばき」と混同されがちですが、先駆けて咲くのは「山茶花」です。この山茶つばきとは、「椿」でなく、ツバキ科の「山茶花」のことを指しています。山茶花という漢字は「山に生え花を咲かせる茶の木」ということで、昔は葉の部分をお茶として飲んでいたことに由来すると言われています。

地始凍(ちはじめてこおる):11月12日頃

寒さが厳しくなり、大地までも凍り始める頃です。感触の良い霜柱を踏みしめて歩くのが楽しく感じられます。夜になると冷え込みがいっそう厳しくなり、冬の訪れがはっきりと肌で感じられるでしょう。朝には霜が降り、場所によっては霜柱が見られることもあります。日ごとに寒さが増していき、季節はいよいよ本格的な冬を迎えます。

金盞香(きんせんかさく):11月17日頃

水仙の花が咲き、芳しい香りを放つ時期になります。「金盞きんせん」は金の盃のことで、水仙の黄色い冠を見立てています。ここでいう「きんせんか」とは、春に咲くキク科の金盞花ではなく、水仙のことをさしています。金盞は6枚の花びらの真ん中に黄色い冠のような副花冠をもつ、水仙の別名です。

●二十四節気「小雪(しょうせつ)」

虹蔵不見(にじかくれてみえず):11月22日頃

陽の光も弱まってきて、虹を見かけなくなる頃となります。「蔵」には潜むという意味もあります。今回の候は、清明の末侯「虹始見にじはじめてあらわる」と対になった候となっています。通常、虹は空気中の水滴に太陽の光があたって反射してできるものなので、陽の光が弱まり空気が乾燥するこの季節は、虹が現れる条件が揃い難くなります。

朔風払葉(きたかぜこのはをはらう):11月27日頃

冷たい北風が、木の葉を散らす季節になります。「朔風さくふう」は北の風という意味で、木枯らしを指します。日本海を渡る時に水分を含んだ北風は、山地にぶつかり日本海側では多くの雪を降らせます。そして、山を越えた太平洋側では乾燥した風になり、「からかぜ」と呼ばれます。

橘始黄(たちばなはじめてきばむ):12月2日頃

橘の実が黄色く色づき始めます。橘は永遠の象徴とされています。橘とは、日本に自生する日本固有の柑橘類「ヤマトタチバナ」のことですが、古くは柑橘類を総称して橘と呼んでいました。一年中つややかな葉をつけ、その葉は枯れることのない常緑樹であることから、めでたいものとして平安時代から御神木として宮中などに植えられてきました。家紋や文化勲章のデザインとしても用いられています。

●二十四節気「大雪(たいせつ)」

閉塞成冬(そらさむくふゆとなる):12月7日頃

空が閉ざされ真冬となり、空をふさぐかのように重苦しい空が真冬の空です。重く広がった灰色の雲から、今にも雪が降り出しそうな空模様を「雪曇り」と言いますが、特にこの時季の日本海側の空は、この言葉にぴったりと当てはまります。山は雪化粧をし平地にも寒風が吹き、本格的な冬が訪れ全国的に冬一色になる季節です。

熊蟄穴(くまあなにこもる):12月12日頃

熊などの動物たちが冬ごもりを始めます。秋になってドングリや山ブドウが実ると、それまで草を食べていた熊は、これらの栄養価が高い木の実を食べるようになります。皮下脂肪をたくわえ、穴にこもって飲まず食わずの状態で、ひたすら春を待ちます。穴の中ではほとんど身動きせず、脈拍や呼吸数も減少しますが、小さな物音やにおいなどの刺激で目を覚ますほど、眠りは浅いそうです。このため熊の場合は「冬眠」ではなく、「冬ごもり」という言い方をするそうです。

鱖魚群(さけのうおむらがる):12月17日頃

さけ」とは「鮭」のことで、この時期になると群れとなって川を上ります。川で生まれた鮭は、海を回遊し故郷の川へ帰ります。昔の人々はこの「鮭の遡上」を神秘的なものととらえてきました。鮭は海中で1~5年ほど過ごすとされていますが、彼らは自分の生まれた川を覚えており、ほとんどの鮭は元の川に戻ってくるそうです。これは鮭の鋭い嗅覚によるものだと考えられています。

●二十四節気「冬至(とうじ)」

乃東生(なつかれくさしょうず):12月22日頃

夏枯草が芽を出し始めます。今回の候は夏至の初候「乃東枯なつかれくさかるる」と対になっていて、うつぼくさを指しています。乃東とは冬に芽を出し夏に枯れる「夏枯草 かこそう」の古名で、紫色の花を咲かせる「靫草うつぼくさ 」の漢方名でもあります。名前の由来は花の形が矢を入れる「うつぼ」という道具に似ていることからとされています。うつぼくさは日当たりの良い草地に群生し、夏至の頃には枯れていきますが、この枯れて茶色くなった花穂が「夏枯草」です。

麋角解(さわしかのつのおつる):12月27日頃

鹿の角が落ちる時期です。「おおしか」は大鹿の事で、古い角を落として生え変わります。メスの鹿は角が生えませんが、オスの鹿は一年に一度、角が根元から自然に取れて、春にはまた新しい角が生え始めます。 生え始めの角は毛で覆われ柔らかく、中には血管も通っているのですが、秋頃になると角の内部が次第に骨のように硬く変化します。こうして立派な角へと変わっていきます。

雪下出麦(ゆきわたりてむぎいづる):1月1日頃

雪の下で麦が芽を出し始めます。麦は越年草で、秋に種をまいて翌年の初夏に収穫します。 寒さにも強く、辺り一面が雪に覆われていても、その下で芽吹き春をじっと待っています。麦は、小麦・大麦・ライ麦・燕麦の総称で、いずれも中央アジアを中心とした乾燥気候の土地を原産地としています。 世界で最も多く栽培されている穀物であり、米とトウモロコシに並ぶ、世界三大穀物の一つです。

●二十四節気「小寒(しょうかん)」

芹乃栄(せりすなわちさかう):1月5日頃

芹が盛んに育つ時期です。春の七草の一つで、7日の七草粥に入れて食べられます。 冷たい水辺で育つ芹は、空気が澄み切るように冷えるこの時期、「競り合う」ように良く育ち、1月から4月にかけて旬を迎えます。食べると爽やかな香りと歯ざわりが特徴です。古くから栽培も行われ、日本全国の河川の水際など水分の多い土壌に自生している姿が見られます。

水泉動(しみずあたたかをふくむ):1月10日頃

地中で凍っていた泉が解け始め、いよいよ水が動き出す時期になってきます。この候でいう「水泉」とは、「湧き出る泉」のことを指しています。空気がまだ非常に冷たく寒さの厳しい環境ですが、目には映らない地中では春に向けて少しずつ動きを見せています。一年間で一番寒さの厳しい大寒が近いにも関わらず、自然界では着々と春へと向かう準備が進み、かすかな暖かさを感じさせる季節です。

雉始雊(きじはじめてなく):1月15日頃

雉のオスたちがメスを探して鳴き始める時期で、雄がケーンケーンと甲高い声をあげます。雉のメスは全体的に茶褐色をしていますが、オスは目の周りに赤みがあり、深緑色を主とした長く優雅な羽を生やしています。雉は地震を予知して鳴くといわれ、古くからその挙動が注目されてきました。これは足の裏で震動を敏感に察知できるからであり、地震や雷などの時に雉が鳴くことを「音合わせ」といいます。

●二十四節気「大寒(だいかん)」

款冬華(ふきのはなさく):1月20日頃

厳しい寒さの中、雪の下からふきのとうが顔を出すようになります。ふきのとうは香りが強くてほろ苦く、カロテン・ビタミンB1・カリウムを含んでいるのでとても体に良いです。款冬かんとうとはふきの別名であり、冬に黄色の花を咲かせることから、冬黄ふゆきから「ふき」になったといわれています。雪解けを待たずに顔を出し、春を知らせてくれるふきのとうは、春一番に最も早く食べることができる山菜で、野山や道端など日当たりの良い場所に自生します。

水沢腹堅(さわみずこおりつめる):1月25日頃

沢に厚い氷が張りつめ、流れる水さえも凍ってしまう厳しい冬の時期ならではの風景がみられます。大気の冷え具合が最も厳しくなるこの時期、沢や池の水面の氷は、溶けたり凍ったりを繰り返しながら厚みを増していきます。その年の最低気温が観測されるのもこの頃が最も多く、氷点下にまで達する地域も非常に多くみられます。ちなみに気温の低さの日本記録は明治35年1月25日に旭川市で観測された−41℃です。

鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく):1月30日頃

鶏が鳥小屋に入って卵を産み始めます。元々鶏は冬場では産卵せずに、春が近づきその気配を感じると卵を産んでいました。この七十二候の「とやにつく」の部分は「にゅうす」とも読め、鳥が卵を産むという意味です。養鶏が中心となった現代と違い、本来は鶏の産卵期は春から初夏にかけてであるので、卵は貴重品だったという歴史があります。鶏は夜明けを知らせるため、古来より神や精霊の時間である夜と、人間の活動する昼との境目を告げる霊鳥だと考えられてきました。そういった歴史を考えると、鶏は長い冬の終わりを告げるのにふさわしい動物と言えます。

いかがだったでしょうか。

この候をもって、七十二候の最後の候で、2月4日頃の立春からは「東風解凍こちこおりをとく」という第一候に変わります。いよいよ春が近づいてきますね。

4回に分けてご紹介してきたこの七十二候も、今回で全てとなりました。古くから親しまれてきた日本の四季を感じていただけたら幸いです。お付き合いいただきありがとうございました。

【参考文献】

・『絵で楽しむ 日本人として知っておきたい二十四節気と七十二候』

水野 久美 (著)

 

 

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