そもそも手帳とは?⑤

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こんにちは、髙橋です。

『そもそも手帳とは?④』の続きになります。前回はタグ:手帳とはからご覧下さい。

 

年玉手帳からどのような進化を遂げたのか?

年玉手帳が配られていた頃の手帳は、月間ページ、週間ページ、メモ欄のすべてに横罫線のガイド線が掲載されたものが、手帳として完成されたモデルでした。サイズも背広の内ポケットに入るようなものばかりで、現在のようにB6やA5といった大きめのサイズはほとんどありませんでした。では、完成されたモデルからどのように進化を遂げたのか、当時のビジネスマンの思考を追いながら考えていきます。

企業や銀行からタダで手に入ったものが、バブル崩壊後の不況により購入しないと手に入らないものになったことは前回お伝えしました。ビジネスマンが自らお金を手帳出して購入するとなった場合、 3つの選択肢があります。

 

・理想に近い内容にカスタマイズできる手帳を探す
・使い慣れている年玉手帳に似た手帳を探す
・求めている内容が記載されている安価な手帳を探す

 

1つ目はシステム手帳のことです。高価なものなので手にする人は少なかったかと思われます。

2つ目は高価ではない上使い慣れている形のため、手にした人は多かったかと思われます。

3つ目ですが、年玉手帳がなくなったことやシステム手帳が周知されたことにより、手帳に対する「固定概念」が徐々に薄れてゆき、自由な発想のもとで様々な種類の手帳が増えていったのです。そのため、心機一転して自分に合った手帳を探した人は多かったでしょう。種類が増えたきっかけになったのは、手帳を活用することによりビジネスを成功させていった有名人による影響が大きく関与しています。

 

成功者の手帳(行動管理)

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

バブル崩壊前は経済が右肩上がりで成長していたため、企業も社員を家族のように大切にしてきましたが、バブル崩壊とともに個々の能力についてシビアに問われる時代へと変化しました。如何に自身の生産効率を高めるか、皆が必死に模索していました。

そこで、成功者が自分の使いやすいように改造した手帳を、ノウハウと共に発売することによって、手帳の種類は次々と増えていきました。サラリーマンが藁にもすがる思いで成功者の手帳とノウハウを求め、購入したところが容易に想像できます。

成功者の手帳の例として、1996年に経済学者の野口悠紀雄氏が考案した「『超』整理手帳」があります。今まで年玉手帳を使っていたものからすると手帳とも言い難いような代物で、A4サイズのジャバラ式で8週間を俯瞰できるといった、綴じ手帳からは想像もつかないような仕様です。

また、時間管理のという観点でバーティカルタイプといわれる時間軸を縦に、日付が横に並ぶ、見開き1週間のタイプもこの時期に登場します。

 

夢実現のツール(目標管理・自己実現)

John HainによるPixabayからの画像

2000年代に入ると、手帳は自己啓発をするための道具としての意味をより強く持つようになります。中でもその先駆けといわれる手帳が「フランクリン・プランナー」です。

この「フランクリン・プランナー」は、1981年にフランクリン・クエスト社を 設立したハイラム・スミスが制作しました。アメリカ建国の父とも呼ばれるベンジャミン・フランクリンが提唱する「13徳(価値観)」と、その実現のために本人が使用した手帳をベースに、スティーブン・R・コヴィーの世界的ベストセラー「7つの習慣」をもとに作られたコヴィー手帳の内容を合わせる形で完成したものになります。

フランクリン・プランナーはただスケジュール管理するためのものではなく、人生の目標やそれを実現するためのプロセスを管理するツールとして作られており、人生を無駄なく生きるためのタイム・マネジメントの原則を教えてくれます。 「手帳に夢を書くと実現する」の元祖になります。

この手帳以降、手帳で夢を叶えるための方法等のビジネス書や手帳が多く発売され、手帳を使うことで人生が変わるといった新たな可能性が提唱されるようになってきました。

 

より自由な手帳(ライフスタイル)

Bingo NaranjoによるPixabayからの画像

有名人の手帳の使い方や目標管理・自己実現といった、「手帳はビジネスマンが世の中を渡り歩くためのツール」といった見方ばかりされてきましたが、より自由に使える手帳が2002年に誕生しました。コピーライターである糸井重里氏により生まれた「ほぼ日」手帳です。この手帳は使用者が日記感覚で使える手帳で、片側1Pが1日といったデイリータイプの手帳です。方眼のページに日記を書くもよし、絵を描くもよし、映画の半券を張り付けるもよしと、兎に角自分を表現するためのキャンバスとしての手帳です。

また、広告代理店に勤める佐久間英彰氏がプロデュースした「ジブン手帳」が、プライベートを詳細に知るためのツールとして手帳をより進化させました。この「ジブン手帳」は手帳本体と「LIFE」「IDEA」の三分冊からなっており、体重や食事、睡眠、今日の気分等、ライフログといわれる自分の生活の記録を取ることに適しています。自分の分析や自分を定義している要素を見つめなおし、自分すら知らない自分に会える手帳になっています。

 

現在の手帳

Free-PhotosによるPixabayからの画像

昔から続く、ビジネスマンが使いやすいスケジュール管理をメインにした手帳、簡易的なマンスリーのみの手帳、ほぼ日のようなデイリータイプの手帳は現在の主流として発売される一方、手帳は各種のニッチなニーズにも対応するようになってきています。

最近では「○○手帳」という特化手帳が多く発売されています。この○○とは、例えば「釣り」「映画」「野球」といった趣味の手帳で、ユーザーごとにあったらうれしい手帳も発売され始めています。
また、視覚障害のある方で、通常の白い紙の手帳では見えにくいという問題を解決するために「見えやすい手帳」を作りたいという思いより、黒い紙に白いペンで書くといった手帳も誕生しました。

「手帳はビジネスマンが使うもの」といった時代からは考えられない時代になってきています。多様化の現代において、手帳がそれを表現しているようにも感じられます。

手帳評論家の舘神龍彦さんの語録には

「ノートとは、ソフトウェアがインストールされていないハードウェア。そこに時間軸という『ゆるいOS』をインストールしたのが手帳」

手帳とは、手の中に納まるだけの帳面ではなく、時代時代において表されるソフトウェアのことを言うのかもしれないですね。
次の時代にはどんな役割を得てどんな進化をするのか、この先も「手帳」という魅力あるソフトウェアを開発するために弊社も邁進して参ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【 手帳の役割の進化について 】

 

 

 

参考文献
舘神龍彦『 手帳と日本人  私たちはいつから予定を管理してきたか』2018年NHK出版
フランクリン・プランナー・ジャパン株式会社 “フランクリン・プランナーの歴史” 2020-8-31.
https://www.franklinplanner.co.jp/c_fpl/history.html

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